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AIに仕事を奪われる?勝手に賢くなる?AIについて知っておくべき5つの事実

「AIに仕事を奪われるな!」と騒がれ始めて何年か経ちますが、いろんな人と話していると、AI技術を正しく理解している人はまだまだ少ないように感じます。

だからこそ、今から学び始めても遅くありません。本記事では、AIについて特に「知ったかぶり」になりがちな5つの事実を紹介します。

 

1.AIは勝手に賢くならない

ディープラーニング」という技術が登場し、いわゆる第三次AIブームと呼ばれる時代が始まりました。そんな中、「ディープラーニング」という名前には、放っておくと勝手に機械が賢くなっていくような印象があり、実際そう信じている人はたくさんいますが、これは大きな誤解です。機械は放っておいても賢くなりません

人間だってそうです。何かを習得するためには、必ずフィードバックが必要です。勉強であれば、自分の出した答えに対して先生や参考書から正誤を教えてもらう、スポーツであれば誰かと戦って勝ったり負けたりする、このように自分のアクションに対してフィードバックを受けることで成長します。

勝手に賢くなっているように見えるAIも、その裏側にはAIの行動をチェックしてフィードバックする人が存在するのです。そしてこの技術は「ディープラーニング」と無関係です。

なお、「勝手に賢くなる」に近い技術として「強化学習」というものがあります。これは、AIの教育方針をあらかじめプログラムしておいて、いちいち人が介入せずにAIにフィードバックする方法です。実体としては人が教育するのと変わりませんが、機械だけで完結している点が「勝手に賢くなる」イメージに近いと思います。

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2.「機械学習」はデータから規則性を見つける技術

では「勝手に賢くなる」という噂はどこから出てきたのでしょうか。実はこれは「機械学習」という技術の意義が誇張されて広まってしまった結果であり、全く間違っているというわけでもありません。

コンピュータ技術の進歩によって、雑多なデータをコンピュータに読み込ませるだけで、その規則性を自動で導くことができるようになりました。これが「機械学習」です。「勝手に賢くなる」という迷信はここから生まれたものですが、一般的な理解と異なるのは、機械学習は教えたことしかできない、という点です。例えば、猫の写真を覚えさせたAIは、見せていない猫の写真も「猫だ」と識別できますが、犬の写真は誰かが教えるまで識別できません。

これは言われてみれば当たり前のことですが、AIの議論ではしばしばこの点が忘れられ、猫しか教えていないのに、放っておくと勝手に犬も識別できるようになる、と思われがちです。

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3.「ディープラーニング」は機械学習技術の一種

次に、流行りの 「ディープラーニング」について考えます。

これは、機械学習技術の一種で、簡単に言うと、複雑な学習ロジックを一つ作るよりも、単純なロジックを多層に組み合わせたほうが学習の精度が高い、という研究成果です。これは大変なイノベーションで、現在世の中のAIは大抵このディープラーニング技術が採用されています。

しかしここでもやはり大事なことは、ディープラーニングが実現したのは学習精度の向上であり、「勝手に賢くなる」等の新機能が生まれたわけではないという点です。

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4.「対話AI」は、実は対話していない

AIの中でも、特にブームなのは「対話AI」でしょう。未来的なCMをよく目にしますが、実際に使ってみると、実は「対話」できていないことがわかります。

実は今のAI技術は人間の発話一つの意図を識別するだけで、話の流れに応じて臨機応変に「対話」することはできません。それでも対話しているように見えるのは、AIの返答が巧妙に考えられているのと、「Aの次にBと言われたら、Cと言う」というプログラムを仕込んでフォローしているからです。

しかし技術的な厳密さはともかく、使う側からすると対話しているように感じられれば十分であり、そういう意味で「対話AI」は既に実現できているとも言えます。

 

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5.今どきのAIの論点は「いかに共存するか?」

ここまでで、AIに関する迷信と実際の技術のギャップが明らかになりました。そして分かったことは、現在のAI技術は人間の能力を丸ごと代替してしまうほどのものではない、ということです。

AI有識者は既に「AI vs 人間」の議論を終え、「いかにAIと共存するか」という論点に変わってきています。昔、「PCが普及すると紙がなくなる」という噂がありましたが、結果、紙の使用料は減るどころか増えています。このように、新しいテクノロジーが登場すると誰もが悲観的な未来を予言しますが、現実はそうならないことの方が多いのです。

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■ブームに流されず、正しい知識を!

確かに一部の仕事はAIによって代替されるでしょう。しかしそれは、機械の導入によって手作業がなくなったのと同じことです。ここまで見てきたように、AIも万能ではありません。大切なことは、人が得意なこと、機械が得意なことを理解し、互いの得意領域でより良い世界を作っていくことなのです。