「AIに仕事を奪われる」という悲観論は根強くありますが、そんな中で、今と同様の技術革新があった19世紀の産業革命では何が起こったのか?という点に興味がわきました。つまり、当時と今の状況を比較することでAIがもたらす影響を語ることができるのではないか、という仮説です。
今回は、以下の参考書をもとに、産業革命がもたらした影響を整理しました。
■産業革命をもたらした技術革新
18-19世紀の英国で産業革命が起こった背景には、以下のような技術イノベーションがありました。「革命」という言葉から、これらが突然現れたようなイメージを受けますが、実は継続的イノベーションの繰り返しにより、長い時間をかけて世の中が変わっていった、という点が特徴です。
1.蒸気機関の発明
言わずと知れた産業革命におけるもっとも有名な発明です。原理が発明されたのは17世紀フランスで、18世紀に入りイギリスの発明家ニューコメンが実用化しました。その後ワットにより改良され、様々な用途に応用されていきます。
2.エネルギー革命
エネルギーの中心が木炭から石炭に変化しました。木炭をエネルギー源にすることは、「木のある所でしか産業は成長できない」ことを意味していました。しかし、石炭という事実上無限のエネルギーが登場したことで、土地に依存せず産業発展が可能になりました。
3.綿工業・製鉄業の発展
1、2に基づいて様々な機械が発明され、圧倒的な生産力で製品を作ることが可能になりました。
■産業革命の影響
上記のような技術革新により、世の中はどう変わったのか。人々の生活、という面で整理してみました。
1.雇用の変化
肉体労働が減り、女性や子供も労働することが可能になりました。また、生産力の向上により農業従事者は減少しましたが、工業の雇用は増加しました。その結果、全体としては雇用が増え、賃金も増えました。一方で、伝統的な農業・手工業を捨てられなかった人との間には格差も生まれたようです。
2.生活の変化
働き方が「住み込み奉公」から「賃金労働」へ変化するにつれて、都市への移住が進みました。これにより、若者は村の伝統・統制から解放され、自由な生活を送るようになりました。これが早婚化を引き起こし、人口増加につながりました。
また、必要なものを自分で生産する自給自足の生活から、働いて得た賃金を使って物を購入する、という生活スタイルに変わりました。
3.意識の変化
「自給自足」から「消費」への変化により、労働に対する考え方にも変化がありました。これまでは必要最低限だけ働いて余暇を重視していたのに対し、少しでも多く働いて多くの賃金を取得し、贅沢な暮らしをすることへのモチベーションが高まりました。これにより労働時間が圧倒的に長くなりました。
■結局、産業革命は貧困を生んだのか?
このように整理してみると、確かに一部の人々にとってはネガティブな側面もあったように見えます。
- 旧来的な産業に携わる人々の貧困
- 資産家と労働者の力関係(今でいうハラスメント)
- 労働時間の長期化による健康問題
という問題は事実として存在し、エンゲルスやマルクスが資本主義からの脱却を目指そうとした背景にも納得ができます。
しかし、ほとんどの人にとっては、自由な生活、働いた分だけ贅沢な暮らしができる、という点で、メリットの方が大きい変化であったとも言えると思います。
これから起こるAI革命=第四次産業革命も、良い点・悪い点だけに目を向けるのではなく、両方の側面があることを理解することが重要ではないでしょうか。
今度は、より現代に近いコンピュータやインターネットの登場が生活に及ぼした影響についても整理してみたいと思います。