目標習得時間:3時間、問題数:6問
■極限がわかると、微積分がわかる
数IIで計算できたのはn次関数の微積分だけですが、極限の計算を学ぶことによって、様々な関数の微分・積分を計算できるようになります。まずは数IIの微積分を復習して、微分・積分の計算がどのように行われているのか、確認しておくことをお勧めします。
■極限の計算パターンを覚えよう
極限の計算とは要するに「収束する形を作る」だけなのですが、シンプルなだけにいくらでも問題のパターンを作れてしまうので、習得にはかなりの計算練習が必要な単元でもあります。
今回は、できる限り少ない練習で極限計算のコツがつかめるよう、以下のまとめを作成しました。演習問題を通して、このまとめの使い方を確認していくことにしましょう。
■とにかく、「収束する形」を目指して変形する
問1
数IIIでは数IAIIBと比べて、問題のパターン化が難しくなってきます。そんな中で有効なのは、「最初の一手」をパターン化しておくことです。まず手を動かし始めることで、解答の糸口を探っていくことができます。
極限の場合で言えば、指針が見えていてもいなくても、とにかく
- 「公式A~Dのどれかを目指して変形する」
- 「知っている変形テクニックのどれが当てはまるか考える」
この2つを考えながら手を動かします。
(1)から順番にやっていきましょう。
まず最初に考えるのは、一番シンプルな公式Aとテクニック①の組み合わせです。
これは難しくないので、一度やれば習得できるでしょう。
次に(2)です。ここでも公式Aを目指していくわけですが、手を動かし始めると気づくことが2つあるはずです。
- 「-∞」の扱い方に頭が混乱しそう
- 分数式ではないので、テクニック①が使いにくい
これらを解決するのが、テクニック②と③です。やってみましょう。
まずはテクニック①~③を覚えると、基本的な多項式の極限計算には対処できるようになります。
それでは、他の公式も確認していくことにしましょう。
問2
指数を見たら、 公式Bを目指します。テクニック①を応用して、公式の形に変形することを考えてみましょう。
指数の扱い方にクセがありますが、これも一度やれば習得できると思います。
なお、この問題は、他の問題集などの模範解答では以下のように解かれているのではないかと思います。
こちらの方が、計算がすっきりしますね。今回は「一番強い項」というテクニックを愚直に守ってn+1乗の項で割りましたが、計算に慣れてきたらこのような効率化も考えていくとよいと思います。
問3
今度は、公式Cを目指していくパターンです。
そろそろコツがつかめてくると、変形のアイデアが浮かんでくるかもしれません。極限のための変形計算は、二次関数の平方完成のように、とりあえず欲しい形を作り、後で補正する、という考え方です。
さて、ここまでで極限計算の基本的なテクニックを紹介しました。まずはここまでを一度振り返り、極限計算のコツを確認してください。
■微分のための極限計算
問4
これまでに身に着けたテクニックを使って、対数関数の微分を求めてみましょう。最終的には公式として答えを覚えればよいのですが、この導出を学んでおくことで、極限の計算力を高めるだけでなく、これまで棚上げしていた
- 「e」という数がなぜ必要なのか
- なぜ対数の底はeなのか
という疑問に答えることができます。
まずは、これまでのテクニック通りに変形してみます。
さて、ここまで計算すると、(公式Dを知らないという前提で)手が止まってしまうはずです。普通に考えると、対数関数の微分はこれ以上シンプルにならないんですね。
しかし、これだと対数関数の微分は実用的じゃない、何とかしたい、というモチベーションから、数学者たちは2つのルールを設定することにしました。
このルールのもとで、先の式を変形してみましょう。
いかがでしょうか。2つのルールを設定することで、対数関数の微分を非常にシンプルな形に収束させることができました。これが「e」という数を導入する目的であり、対数の底がいつも「e」になっている(=自然対数の底)理由です。計算テクニックとともに、このような周辺知識も押さえておくと、極限の理解が深まるでしょう。
■条件が与えられたら、はさみうちの原理を意識
次は少し特殊なテクニックを扱います。何か極限の条件が与えられた時や、証明問題において有効な「はさみうちの原理」です。これは、公式としては当たり前のことを言っているだけなのですが、「どこで使うか?」「どう使うか?」が難しいテクニックです。
問5
先ほどeの定義を紹介しましたが、実は少しズルをしていて、本当はあの公式はnが自然数の場合を前提にしています。したがって、対数関数の微分のように、実数としてあの公式を使いたいときは、まず実数でも公式が成り立つことを証明しておく必要があります。
この問題のように、条件が与えられたり、証明問題だったりする場合は、はさみうちの原理を意識します。そして、はさみうちの原理を利用するために、まず不等式を作ることからスタートします。
答えを見れば難しくないと思いますが、問題は、「試験の土壇場でこれを思いつくかどうか」です。この解法を理解した上で、問題集などからはさみうちの原理を使う問題をいくつか解いてみて、どんな時にこの解法が有効なのか、感覚を身に着けておくとよいと思います。
■積分のための極限計算(区分求積法)
問6
この極限は、以下の図形の面積を表します。(この考え方が不安な方は、画面上部のリンクから数II積分の回を復習してみてください)
この問題は、ジャンルとしては「無限級数」というものに分類されますが、指数関数の積分と絡めて無限級数を学ぶと、この計算を習得する意義を理解できると思います。
それでは計算してみましょう。
テクニックの種類として新しいものはありませんが、計算力が求められます。
∞×0になってしまうほうを取り出して考えてみましょう。実はこの式は公式として紹介されていることも多いのですが、eの定義を理解していると、公式を知らなくても答えにたどり着けます。
■極限がわかると、微積分がわかる
いかがだったでしょうか。ただの計算問題ととらえられがちな極限ですが、微積分と絡めて理解すると、これを学ぶ意味が見えてくると思います。今回紹介したテクニックを理解した上で、問題集などで演習を積めば、この単元だけでなく、微積分の理解も深まっていくことと思います。
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